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森川智之《注文の多い料理店》

森川智之《注文の多い料理店》



注文の多い料理店

要求特別多的餐廳


宮沢賢治


朗読:森川智之


二人の若い紳士しんしが、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲てっぽうをかついで、白熊しろくまのような犬を二疋ひきつれて、だいぶ山奧やまおくの、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを雲いいながら、あるいておりました。

兩個年輕的紳士,從頭到腳一身英國士兵的裝束,肩上扛著亮晶晶的獵槍,身後跟著兩隻白熊一般大的獵狗,走在深山小徑,踏著沙沙作響的落葉,邊走邊談著話:


「ぜんたい、ここらの山は怪けしからんね。鳥も獣けものも一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」


「整個說來,這一帶的山都不行啦。連一隻鳥一頭獸都找不到。真想砰、砰的給他放兩槍過過癮,管他中的是什麼東西。」


「鹿しかの黃いろな橫っ腹なんぞに、二三発お見舞みまいもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒たおれるだろうねえ。」


「如果能在野鹿的黃肚皮上,狠狠給他放個兩三槍,不知有多痛快。黃鹿大概會先轉上幾圈,再撲通一聲倒在地上吧。」

それはだいぶの山奧でした。案內してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奧でした。


他們已經走進相當深邃的山中。這深山老林,即使是那個為紳士們當嚮導的打獵專家,也在一不小心中與紳士們走散了。


それに、あんまり山が物凄ものすごいので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠うなって、それから泡あわを吐はいて死んでしまいました。


而且,又因為深邃得令人感到毛骨悚然,兩隻像白熊一般大的獵狗,竟然同時昏厥倒地,在地面上嗚嗚哀叫了一會,然後口吐白沫昏死過去。


「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の眼まぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。

「老實說,這下我白白損失了二千四百元。」紳士之一翻翻獵狗的眼皮,查看後說。


「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。


「我損失了二千八百元。」另一個紳士不甘心地歪著頭回答。


はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら雲いました。

第一個開口的紳士,臉色稍稍轉為蒼白地凝視著另一個紳士,說:


「ぼくはもう戻もどろうとおもう。」


「我認為我們最好回頭。」


「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空すいてきたし戻ろうとおもう。」


「好啊,我也感到有點冷,肚子也餓了,正想回頭呢。」


「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日きのうの宿屋で、山鳥を拾円じゅうえんも買って帰ればいい。」


「那麼,我們今天就到此為止算了。反正回程時,可以在昨晚住宿的旅館,花十元買野鳥帶回家就行了。」


「兎うさぎもでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」


「對了,那兒也有山兔。反正打的跟買的差不多。那就回頭吧。」


ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見當がつかなくなっていました。


可是,他們根本不知道該走哪個方向才能回去。


風がどうと吹ふいてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。


這時颳起一陣颶風,樹葉和雜草被颳得沙沙作響,樹木也轟隆轟隆喧嚷著。


「どうも腹が空いた。さっきから橫っ腹が痛くてたまらないんだ。」


「我肚子真餓了,小腹從剛剛開始就疼得我受不了。」


「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」


「我也是,我連一步都不想走了。」


「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」


「我也走不動了。唉,真想吃點東西。」


「喰たべたいもんだなあ」


「我也真想吃點東西。」


二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを雲いました。


兩個紳士在沙沙作響的芒草叢中,你一句我一句的。


その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒いっけんの西洋造りの家がありました。


然後無意間回頭一看,竟發現身後有一棟華麗的西式建築。


そして玄関げんかんには


RESTAURANT


西洋料理店


WILDCAT HOUSE


山貓軒


という札がでていました。


玄關前掛著一個招牌:


RESTAURANT


西餐餐廳


WILDCAT HOUSE


山貓軒


「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」


「喂,你看。原來這裡還挺開化的。進去看看吧。」


「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」


「奇怪,這種鬼地方怎會有餐廳?算了,不管怎樣總有東西可吃吧!」


「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」


「那還用說,招牌上不是寫得一清二楚嗎?」


「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」


「那我們快進去吧!我已經餓得站不住了。」


二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸せとの煉瓦れんがで組んで、実に立派なもんです。


兩人來到玄關前。玄關是用白色瓷磚砌成的,相當富麗堂皇。


そして硝子がらすの開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。


入口處是一扇玻璃雙扇門,門上用燙金字寫著:


「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮えんりょはありません」


"歡迎光臨,各位請進,不必客氣。"


二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。


兩人頓時笑逐顏開,說:


「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走ちそうするんだぜ。」


「你看!真是老天不負苦心人。今天雖然累了一整天,但最後還是碰到這種好運。這家雖是餐廳,不過可以免費用餐。」


「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」


「嗯,好像是可以白吃一頓。既然寫著不用客氣,意思是免費吧。」


二人は戸を押おして、なかへ入りました。そこはすぐ廊下ろうかになっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。


兩人推門而入。進口處是一道走廊。玻璃窗背面又有燙金字:


「ことに肥ふとったお方や若いお方は、大歓迎だいかんげいいたします」


「我們特別歡迎發福的人和年輕人。」


二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。


兩人看到「特別歡迎」的字眼,更是喜形於色:


「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」


「喂,我們被列為特別受歡迎的人。」


「ぼくらは両方兼ねてるから」


「因為我們既年輕又發福。」


ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗ぬりの扉とがありました。


兩人順著走廊往前走,眼前又出現一扇塗著淡藍色油漆的門。


「どうも変な家うちだ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」


「這家餐廳真怪,怎麼有這麼多門?」


「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」


「這是俄羅斯建築。寒冷地帶和深山裡都是這種建築。」


そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黃いろな字でこう書いてありました。


兩人正要推門而入時,發現門上有黃色字體寫著:


「當軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」


「本店是家要求很多的餐廳,還請各位多多包涵。」


「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」


「看樣子這家餐廳客人還不少。在這種深山真是罕見。」


「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」


「這不稀罕吧!你想想,東京一些大餐廳有幾家是在大街上的?」


二人は雲いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、


兩人邊說邊推開門,然後發現門背面又寫著:


「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」


「本店要求可能特別多,還請各位忍耐一下。」


「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。


「這到底是怎麼回事?」紳士之一皺著眉頭。


「うん、これはきっと注文があまり多くて支度したくが手間取るけれどもごめん下さいと斯こういうことだ。」


「啊,這可能是表示客人太多,叫菜的人多,準備飯菜時要花點時間,請客人原諒的意思吧。」


「そうだろう。早くどこか室へやの中にはいりたいもんだな。」


「大概是吧。總之,我真想趕快進房間。」


「そしてテーブルに座すわりたいもんだな。」


「是啊,然後早點坐到餐桌旁。」


ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄えのついたブラシが置いてあったのです。


然而,傷腦筋的是,眼前又出現一扇門。門邊掛著一面鏡子,鏡子下擺著一把長柄毛刷。


扉には赤い字で、


「お客さまがた、ここで髪かみをきちんとして、それからはきもの


の泥どろを落してください。」


と書いてありました。


門上用紅色字體寫著:


"各位顧客,麻煩請在此梳理頭髮,並請抹凈鞋上的污泥。"


「これはどうも尤もっともだ。僕もさっき玄関で、山のなかだとおもって見くびったんだよ」


「這倒合乎情理。剛才在玄關時,我還認為在這種山間的餐廳,大概沒什麼大不了的。」


「作法の厳しい家だ。きっとよほど偉えらい人たちが、たびたび來るんだ。」


「這家餐廳倒真講究禮法,一定是時常有達官顯要來這裡光顧吧。」


そこで二人は、きれいに髪をけずって、靴くつの泥を落しました。


於是,兩人遵照吩咐,梳理了頭髮,並把鞋上的污泥抹凈。


そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否いなや、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと室の中に入ってきました。


然後呢?萬萬沒想到剛把刷子放回原處,刷子竟逐漸變成透明,最後竟消失了。再來是一陣颶風颼颼地刮進房裡。


二人はびっくりして、互たがいによりそって、扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方とほうもないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。


兩人大吃一驚,互相倚偎著,趕忙打開門,閃進下一個房間。他們現在只想快快吃點熱騰騰的飯菜,恢復一下體力,否則真不知又會出現什麼怪名堂。


扉の內側に、また変なことが書いてありました。


豈知門裡邊又出現奇怪的一行字:


「鉄砲と弾丸たまをここへ置いてください。」


"請把槍支與彈藥放在這裡。"


見るとすぐ橫に黒い台がありました。


仔細一瞧,身邊果然有一個黑色的櫃檯。


「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」


「說的也是,總不能背著槍吃飯吧。」


「いや、よほど偉いひとが始終來ているんだ。」


「一定是有大人物經常來光顧。」


二人は鉄砲をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。


兩人拿下槍支,解下皮腰帶,放在櫃檯上。


また黒い扉がありました。


然後又出現一扇黑門,門上寫著:


「どうか帽子ぼうしと外套がいとうと靴をおとり下さい。」


「請摘下帽子,脫下大衣和鞋子。」


「どうだ、とるか。」


「怎麼辦?脫嗎?」


「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奧に來ているのは」


「沒辦法,脫吧。看來裡面一定有貴人在。」


二人は帽子とオーバーコートを釘くぎにかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。


兩人把大衣和帽子掛在牆上的釘子上,脫下鞋子,光著腳啪嗒啪嗒地走進門裡。


扉の裏側には、


「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡めがね、財布さいふ、その他金物類、


ことに尖とがったものは、みんなここに置いてください」


と書いてありました。


門背面寫著:


「請把領帶別針、袖扣、眼鏡、錢包和其他金屬類,尤其是尖銳的東西,統統放在這裡。」


扉のすぐ橫には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵かぎまで添そえてあったのです。


門邊,有個塗著黑漆的厚重保險柜,保險柜的門被打開著。旁邊還放著鑰匙。


「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。金気かなけのものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと斯こう雲うんだろう。」


「看來有些菜肴必須用電,所以金屬類的東西有危險。尤其是尖銳的東西特別危險。是這個意思吧?」


「そうだろう。して見ると勘定かんじょうは帰りにここで払はらうのだろうか。」


「大概吧!那是說,吃完後在這付賬嘍?」


「どうもそうらしい。」


「也許吧。」


「そうだ。きっと。」


「一定是這樣的。」


二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと錠じょうをかけました。


兩人摘下眼鏡,取下袖扣,全部放進金庫,然後鎖上鑰匙。


すこし行きますとまた扉とがあって、その前に硝子がらすの壺つぼが一つありました。扉には斯こう書いてありました。


走了一會,前面又出現一扇門,門前擺著一個玻璃缸。門上寫著:


「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」


「請用缸里的奶油塗在您的臉部和手腳上。」


みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。


兩人仔細一看,玻璃缸里果然盛滿著奶油。


「クリームをぬれというのはどういうんだ。」


「抹奶油幹什麼?」


「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室へやのなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奧には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」


「這個啊,外面不是很冷嗎?可是屋裡又熱乎乎的,一冷一熱容易讓皮膚皸裂,抹奶油大概是預防步驟。總之裡面一定有個貴人在。搞不好我們能在這地方與某方權貴結識。」


二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ殘っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。


兩人忙著把缸里的奶油塗抹在臉上、手上,又脫下襪子,在腳上抹了奶油。可是缸里的奶油仍沒用光,只好假裝塗抹在臉上而偷偷吃掉。


それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、


「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」


と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。


然後再匆匆推開門進入。門裡邊又寫著:


「奶油都塗抹上了嗎?耳朵也抹了嗎?」


門邊另有一瓶小小的奶油。


「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意周到しゅうとうだね。」


「對了,我忘了抹耳朵。好險,差點讓耳朵的皮膚皸裂。這裡的老闆想得可真周到。」


「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」


「對啊,真得是無微不至。不過說真的,我真想快點吃個東西,只是走來走去都是走廊,真沒辦法。」


するとすぐその前に次の戸がありました。


說著,眼前又出現一扇門,門上寫著:


「料理はもうすぐできます。


十五分とお待たせはいたしません。


すぐたべられます。


早くあなたの頭に瓶びんの中の香水をよく振ふりかけてください。」


「飯菜立刻就上。


不到十五分鐘就能吃了。


馬上就能吃了。


趕快在您的頭上撒上金瓶中的香水。」


そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。


門前果然擱著一瓶金光閃閃的香水。


二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。


兩人趕緊拿起香水瓶往頭上撒。


ところがその香水は、どうも酢すのような匂においがするのでした。


豈知,這香水的味道聞起來竟像是食醋。


「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」


「這香水怎麼很像食醋?怎麼回事?」


「まちがえたんだ。下女が風邪かぜでも引いてまちがえて入れたんだ。」


「大概裝錯了。一定是女服務生感冒鼻子不靈把食醋當香水了。」


二人は扉をあけて中にはいりました。


兩人推門而入。


扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。


門背面有一行大字:


「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。


もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。」


「您一定感到要求太多而覺得很煩吧。還請多多包涵。


這是最後一項要求。麻煩請在全身塗抹上罐里的鹽。」


なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん塗った顔を見合せました。


果然,眼前有一隻雅緻的青陶鹽罐。只是這最後一項要求,卻也讓兩人大吃一驚,彼此獃獃望著各自塗抹著奶油的臉。


「どうもおかしいぜ。」


「這好像有點不對勁。」


「ぼくもおかしいとおもう。」


「我也覺得有點不對勁。」


「沢山たくさんの注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」


「所謂的要求多,原來不是客人多訂單多,而是餐廳向客人的要求多。」


「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、來た人にたべさせるのではなくて、來た人を西洋料理にして、食べてやる家うちとこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。


「所以說,我想,所謂的西餐廳,所謂的西洋料理,不是讓客人來吃飯菜的,而是把客人當作材料烹調成西洋料理,然後……然後……哦……我……我們……」講到此,他全身已哆哆嗦嗦抖顫個不停,無法再講下去了。


「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。


「那……我……我們……哇!」另一個也全身哆哆嗦嗦抖顫個不停,無法再講下去。


「遁にげ……。」がたがたしながら一人の紳士はうしろの戸を押おそうとしましたが、どうです、戸はもう一分いちぶも動きませんでした。


「快……逃……」紳士之一哆哆嗦嗦地想拉開身後的門,豈知,門竟紋絲不動。


奧の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、


走廊盡頭還有一扇門,門上有兩個很大的鑰匙孔,和各被刻成一對銀色刀叉的圖案。


「いや、わざわざご苦労です。


大へん結構にできました。


さあさあおなかにおはいりください。」


と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉めだまがこっちをのぞいています。


門上另有一行字:


「真是辛苦各位了。


現在一切準備就緒。


請進,馬上就要開飯了。」


不僅如此,鑰匙孔還露出兩個青色眼睛,骨碌地打著轉,正在窺視外面。


「うわあ。」がたがたがたがた。


「哇!」哆哆嗦嗦。


「うわあ。」がたがたがたがた。


「哇!」哆哆嗦嗦。


ふたりは泣き出しました。


兩人嚇得抱頭大哭。


すると戸の中では、こそこそこんなことを雲っています。


這時門內傳來竊竊私語的聲音。


「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」


「完了,他們察覺了。都不肯在身上塗抹鹽呢。」


「あたりまえさ。親分の書きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、間抜まぬけたことを書いたもんだ。」


「那當然啦!都怪老闆寫的太明顯了,最後一項要求又多,又說什麼您一定感到要求太多而覺得很煩吧,還請多多包涵之類的。」


「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けて呉くれやしないんだ。」


「管他的,反正老闆連一根骨頭也不會分給我們的。」


「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって來なかったら、それはぼくらの責任だぜ。」


「說得也是,可是那兩個傢伙若不進來,咱們可就得負責任。」


「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿さらも洗ってありますし、菜っ葉ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ葉をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」


「要不要叫他們進來?叫吧叫吧!喂,客人啊,來坐啊,來坐啊!趕快來啊!盤子都洗好了,青菜也用鹽巴揉搓好了,就等你們進來和青菜拌一拌,再盛到雪白的盤子上啦。趕快進來啊!」


「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌きらいですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」


「喂!來坐啊!來坐啊!如果你們不喜歡涼拌沙拉,我們也可以起火換個油炸的。總之,趕快進來啊!」


二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑かみくずのようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、聲もなく泣きました。


兩位紳士早已嚇得魂不附體,一張臉顫抖得像被揉皺的面紙,你看著我,我看著你,全身哆哆嗦嗦,聲音都發不出來了。


中ではふっふっとわらってまた叫さけんでいます。


門裡響起了幾聲輕微的吃吃笑聲,繼而響起叫喊聲:


「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては折角せっかくのクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」


「來坐啊!來坐啊!再哭下去,臉上的奶油會脫落的。啊?是,老闆,菜肴馬上上桌。喂!客人啊,趕快進來啊!」


「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」


「進來啊!進來啊!我們老闆已經披好餐巾,拿著刀叉,流著口水,正在等你們光臨呢!」


二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。


兩人只會一直哭,一直哭,一直哭。


そのときうしろからいきなり、


「わん、わん、ぐゎあ。」という聲がして、あの白熊しろくまのような犬が二疋ひき、扉とをつきやぶって室へやの中に飛び込んできました。鍵穴かぎあなの眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくる廻まわっていましたが、また一聲「わん。」と高く吠ほえて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸い込まれるように飛んで行きました。


這時,身後突然傳來一陣汪汪的狗吠聲。原來是那兩隻白熊般的大狗破門而入。鑰匙孔內的眼睛,一忽兒就消失了。兩隻狗嗚嗚低吼著在房間內繞圈子,然後又汪地大叫一聲,再沖向另一扇門。門"啪"地一聲被沖開,兩隻狗一溜煙地衝進門內。


その扉の向うのまっくらやみのなかで、


「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という聲がして、それからがさがさ鳴りました。


門那一邊漆黑一片,只聽見裡面傳來一陣「喵——嗷——咕嚕咕嚕——」的聲音。再是一陣沙沙作響聲。


室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。


突然,房間像煙霧般消失無蹤。一看,兩人竟然站在草叢中,凍得全身發抖。


見ると、上著や靴くつや財布さいふやネクタイピンは、あっちの枝えだにぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。風がどうと吹ふいてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。


再四下一看,原來上衣、鞋子、錢包、領帶別針,東一件西一個,不是掛在樹枝上,就是散落在樹根上。風,颼颼吹起,枯草沙沙作響,樹葉嘩嘩喧鬧,樹榦隆隆吵雜。


犬がふうとうなって戻もどってきました。


兩隻狗又嗚嗚低吼著跑回來。


そしてうしろからは、


「旦那だんなあ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。


然後身後傳來大喊聲:


「先生!先生!」


二人は俄にわかに元気がついて


「おおい、おおい、ここだぞ、早く來い。」と叫びました。


兩人立即振奮起來,大聲回喊著:


「喂!喂!我們在這裡!在這裡!」


簔帽子みのぼうしをかぶった専門の猟師りょうしが、草をざわざわ分けてやってきました。


戴著斗笠的嚮導獵人,唰唰撥開草叢走了過來。


そこで二人はやっと安心しました。


兩人總算安下心。


そして猟師のもってきた団子だんごをたべ、途中とちゅうで十円だけ山鳥を買って東京に帰りました。


他們吃過獵人帶來的飯糰後,又在途中花了十元買了野鳥,才回東京。


しかし、さっき一ぺん紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。


但是,即使回到東京,泡了熱澡,他們那被嚇得發皺的臉,卻永遠也不會恢復原狀了。


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作者:和邪社倉舞,射手座,坐標西安 。混跡創投圈的職場墨客,鴛鴛相抱何時了,鴦在一旁看熱鬧,天下大同~

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